「おじいちゃんが孫に語る戦争」と「ワルキューレ」

おじいちゃんが孫に語る戦争

田原 総一朗 / 講談社

図書館で見つけて、このところ戦争関連の質問の多い息子が読むかな、と思って借りました。日本がなぜ勝ち目のない戦争を始めたのか、とても分かりやすく書かれていて、私が勉強になりました。田原さんは小5の双子のお孫さんのために書かれたそうですが、中学生ぐらいになればもっとよく理解できそうかな。

少年時代の田原さんの夢は「お国のために戦って名誉の戦死をとげること」だったそうです。そういう教育を受けた世代なのです。息子にとってはこれがすごく衝撃的だったみたい。

「日本は正義のために戦っている。悪い国と戦って名誉の戦死をとげよ」と教えられていたのに、戦争に敗けた途端、「戦争は悪いことなのだ。戦争が起こりそうになったら反対の声をあげよ」と正反対のことを教えられ、田原少年は先生に言われるままに教科書を墨で塗りつぶしながら、大人のいうことや新聞に書かれていることを、簡単に信じたらいけないな、と思ったそうです。それは本当なのか、正しいのか、自分で調べ考えて、自分で判断できるようにならなければ、という気持ちが後にジャーナリストという職業を選ぶ元になったとのことでした。

この本では二二六事件のことも解説されていたのですが、これをを読んだ日に、たまたま録画してあった映画「ワルキューレ」を観ました。
そしたら、なんだかドイツで起きた暗殺計画と二二六事件はすごく似ている気がしました。

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ポニーキャニオン


世論の流れには強い力があり、ぼんやりしているとあっという間に流れにのみ込まれてしまいます。日本もドイツも戦争に突き進んでいった背景には、一般大衆が情報を取捨選択し、吟味し、何が正しいのか判断できない時代だったこと、そして熱狂的とも言える世論の流れが関係しています。今、幸いなことに多様な価値観や情報を得る機会を与えられている時代に生きる私は、よく見聞きし考えて、正しいことを見極めることの大切さ、そして「正しい戦争なんてない」という田原さんのメッセージを子供たちに伝えていこうと思います。

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# by honyakusha | 2015-08-15 17:18 | 本・映画・舞台 | Comments(0)

ご近所の犬

最近、お散歩で時々会うようになった三本脚の犬。いつもすれ違いながら挨拶するだけだったけど、アロンソに興味を示してるようだったので、近づけてみました。

ミックスの女の子。推定5歳ぐらいだそうで、かわいい顔立ちです。でもアロンソに歯をむき出して吠えました。アロンソはとってもフレンドリーで、なかなか打ち解けないタイプの犬もアロンソには吠えないという場合が多いのです。でも今回は違いました。

前脚が1本少ない保護犬の女の子。心にかなり深い闇を抱えているのだと思います。飼い主さんの愛情で少しずつ心を開いていけますように。

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# by honyakusha | 2015-07-01 05:02 | | Comments(0)

お花のレスキュー

隣の土地に家が16軒も建つらしい。今までは趣味の菜園として、四季折々の野菜や花で周辺住民の目を楽しませてくれる楽園のような土地でした。昨年末に木々が伐採され、砂利が敷かれ、3月までは近所の幼稚園の駐車場として利用されていました。

4月になり、いよいよ明日から宅地造成が始まるという日。押し固められた砂利の下から、小さな緑の新芽がいくつか顔をのぞかせてるのに気づきました。何の芽なのかも分からなかったけど、大きな環境変化にもじっと耐え、砂利の隙間から春の太陽を求めて姿を現したその芽は、とても健気に思えました。

明日には大型重機に踏みつぶされてしまうと思うとそのままにはできず、子供たちと一緒にスコップで球根を掘り出し、うちの庭に植えました。

小さな芽は我が家の庭ですくすくと成長し、つぼみをつけ、ついにこんな立派なお花が咲いたのです。
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楽園は失われたけど、この花の命を救えてよかったなあ。

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# by honyakusha | 2015-06-17 11:08 | 歳時記 | Comments(0)

舞台「嵐が丘」

そう言えば「嵐が丘」の感想を書いてませんでした。

中学生の頃、世界十大小説の1つに数えられる小説「嵐が丘」を読みました。古い翻訳のためかかなり読みにくく、当時の自分は、なんで愛しあう2人がこんなに汚い言葉で罵り合うのかよく分からず。ともかく、ひたすら荒涼としたイングランド北部の描写と、野卑なヒースクリフが印象に残りました。今回、改めて「嵐が丘」を読んでみた。

嵐が丘〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

E・ブロンテ / 光文社

新訳はずいぶんと読みやすくなっておりました。そして人生のあれやこれやを経験してきた今の自分には、キャサリンとヒースクリフの複雑な思いがよくよく伝わってきたのでした。

20代の頃、イングランドとスコットランドを2週間かけて一人旅しました。ロンドンから列車で北上しながら興味のある街を見て回ったんですが、突然の悪天候に見舞われイングランド北部の荒々しい気候を肌で感じたことを今も強烈に覚えています。嵐の中、灰色の空を背景にそびえ立つ古い聖堂のたたずまいは、まさにゴシックの世界でした。

今回の舞台は演出のG2さんが、“分かりやすい”とか“食べやすい”、“手に入りやすい”ことばかりを目指す日本の現状に疑問を呈し、「嵐が丘」というとっつきにくい小説を、本来“手に入り難さ”が命綱である舞台演劇として濃厚に刺激的に再現した、というものでした。

原作を読み終えたのが、劇場に向かう地下鉄の中でした。原作の最後の部分を芝居の冒頭に持ってきて、そこから過去を回想する、という演出だったので、幕が開くと、ついさっき国会議事堂前駅あたりで読みながら、自分なりに頭の中で思い描いたシーンが文中のセリフもそのままに目の前に現れるという、なんだかとっても不思議に面白い状況なのでした。安定感十分の戸田恵子さんを軸に、堀北真希さん、山本耕史さんが美しく激しく悲しいキャサリンとヒースクリフの生涯を演じる姿、そしてイングランドの旅で目にした風景がよみがえるような生演奏と共に、中学生の私にはよく分からなかった「愛憎相半ばする」という概念がようやく腑に落ちた気がしたのでした。

映画も舞台も、原作や監督演出者の意図に触れながらもっと深く味わっていきたいなという思いを新たにした「嵐が丘」でした。

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# by honyakusha | 2015-06-14 06:36 | 本・映画・舞台 | Comments(0)

「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」

The Imitation Game イミテーション・ゲーム 英語音声英語字幕のみ[PAL-UK版]

Studiocanal


劇場公開は終わったと思ってたら、近くのシネコンでアンコール上映されていたので観てきました。
すごくせつなかったです。

あの時代にマイノリティーとして生きる厳しさ。パブリックスクールでいじめに遭うシーンは特に胸が痛かった…。
我が息子もいろいろあるとは言え、ある程度は多様性が理解され許容される今の時代に生まれて幸運だったと思いました。

この映画では天才数学者の秘密を描きつつ、エニグマという暗号機で作られた暗号メッセージを彼がチームの仲間と共に解読する経緯が紹介されます。もう少し知りたくなって、この本を読んでみました。

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

サイモン シン / 新潮社


カエサルからスコットランド女王メアリー・スチュアート、ルイ14世をはじめ多くの興味深い暗号エピソードが紹介され、世界の歴史とは暗号作成とその解読の歴史でもあるのだなあ、と感じました。戦争中は暗号解読を敵国に知られない方が有利ですから、暗号解読者の存在が公になることはなく、その偉業が一般から賞賛を受ける機会も当然なく、解読者本人も固く口止めされているために、戦地で闘わずに何をしてるんだ!と責められても何も言えないというのがまたせつなかった。

頭髪を剃って秘密のメッセージを頭皮に刺青し、再び髪が伸びてから怪しまれずに敵国に侵入し、髪を剃ってそのメッセージを伝える、というかなりのんびりした手法から暗号作成の最高峰エニグマ機に至るまで、具体的な暗号技術の解説もありましたが、数学的な部分は私の頭ではほとんど理解できませんでした。

でも、もとの文章をある法則にのっとって別の文字や単語に置き換えるという最も基本の暗号作成手法は、英語を日本語に置き換える翻訳作業とあまり変わらない気がした。アルファベット26文字をひらがな漢字カタカナまじりの縦書き文章に置き換えてしまえば、かなり解読が難しい暗号文になるはず。難点は、日本人ならすごく簡単に解読できてしまうところです。

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# by honyakusha | 2015-06-11 10:00 | 本・映画・舞台 | Comments(0)