舞台「嵐が丘」

そう言えば「嵐が丘」の感想を書いてませんでした。

中学生の頃、世界十大小説の1つに数えられる小説「嵐が丘」を読みました。古い翻訳のためかかなり読みにくく、当時の自分は、なんで愛しあう2人がこんなに汚い言葉で罵り合うのかよく分からず。ともかく、ひたすら荒涼としたイングランド北部の描写と、野卑なヒースクリフが印象に残りました。今回、改めて「嵐が丘」を読んでみた。

嵐が丘〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

E・ブロンテ / 光文社

新訳はずいぶんと読みやすくなっておりました。そして人生のあれやこれやを経験してきた今の自分には、キャサリンとヒースクリフの複雑な思いがよくよく伝わってきたのでした。

20代の頃、イングランドとスコットランドを2週間かけて一人旅しました。ロンドンから列車で北上しながら興味のある街を見て回ったんですが、突然の悪天候に見舞われイングランド北部の荒々しい気候を肌で感じたことを今も強烈に覚えています。嵐の中、灰色の空を背景にそびえ立つ古い聖堂のたたずまいは、まさにゴシックの世界でした。

今回の舞台は演出のG2さんが、“分かりやすい”とか“食べやすい”、“手に入りやすい”ことばかりを目指す日本の現状に疑問を呈し、「嵐が丘」というとっつきにくい小説を、本来“手に入り難さ”が命綱である舞台演劇として濃厚に刺激的に再現した、というものでした。

原作を読み終えたのが、劇場に向かう地下鉄の中でした。原作の最後の部分を芝居の冒頭に持ってきて、そこから過去を回想する、という演出だったので、幕が開くと、ついさっき国会議事堂前駅あたりで読みながら、自分なりに頭の中で思い描いたシーンが文中のセリフもそのままに目の前に現れるという、なんだかとっても不思議に面白い状況なのでした。安定感十分の戸田恵子さんを軸に、堀北真希さん、山本耕史さんが美しく激しく悲しいキャサリンとヒースクリフの生涯を演じる姿、そしてイングランドの旅で目にした風景がよみがえるような生演奏と共に、中学生の私にはよく分からなかった「愛憎相半ばする」という概念がようやく腑に落ちた気がしたのでした。

映画も舞台も、原作や監督演出者の意図に触れながらもっと深く味わっていきたいなという思いを新たにした「嵐が丘」でした。

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by honyakusha | 2015-06-14 06:36 | 本・映画・舞台・ドラマ | Comments(0)
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